第三回 今年出会った心に残った書籍 横山秀夫「半落ち」

さて、今週も一週間経ちました


第一回 重松清「エビスくん」〜「ナイフ」より

第二回 奥田英朗「邪魔」

に続き

今回、ご紹介するのは

横山秀夫「半落ち」


映画で知っている人も多いでしょう


そんな私も本当はAmazonプライムで近々観るかって思っていたら動画が観れない身体になってしまったので

仕方ない

原作観るかあって具合でした


因みに寺尾聡主演でそのタイトルだけで観たいと思っていたので

内容も原作者も知らなかったのですよ


ああ、先日観た「64(ロクヨン)」の人かあと…

(因みに今原作下巻拝読中)


話しの内容は

元警察官が痴呆症の妻に懇願され

殺してしまい、二日経って自首しに来たのだが

他の事はスルスルと供述するのにたいして

空白の二日間に関してだけは一向に口を割らない


それぞれの担当者がリレー式で状況を語り

その二日間を明白にするまでの物語である


そして、明かされた二日間の主人公の行動に

わたしはとても感動したし、自分の身体がもう少し自由になったら同じことをしようかなとも思った


しかし、横山秀夫のwikiに書いてあるとおり

その行動が問題となり

彼は「直木賞決別宣言」をするに至ることとなった謂わく的作品でもある


あんなタレント面してた作家がわかることが

元新聞記者の横山秀夫にわからないわけないだろ!とわたしの勝手な先入観で遺憾を示すわけですわ


と、その話とは別に

この話には

主役の奥さん以外にももう一人、痴呆症の男性が登場する

主役に対して介護放棄だと怒る息子に対し、主に面倒をみている奥さんは、その人はとても優しい人だと言う



さて、ここから私情になるが

わたしには10年以上前から若年性アルツハイマーを患っている叔母がいる

まだ50代だったと思う


叔母がおかしくなり、家で怒鳴りちらしては食器やら物を投げつけていると聞いた時は全く想像つかなかった


寧ろ、昔から家で怒鳴り散らしては食器や物を投げつけてくるのは兄である私の父親の方であり

妹である叔母は、とてもか細い小さな声で話す人でおとなしくスラッとしていて色白でとても上品な印象しかなかった


また、旦那さんである叔父も、東大出のエリートながらにそんなことを全く鼻にかけることもなく

おとなしく穏やかな空気に包まれていて

それがとても羨ましく、叔母に伝えたら

「うちは父も母もお兄ちゃんもうるさかったから絶対に静かな人と結婚しようと思っていたの」と言っていたのを思い出す


叔母は昔でいうスチュワーデスの試験が受かったのに両親に猛反対されて辞退せざるおえず、学校の門には

兄(わたしの父)がいつも迎えに来ていたという


わたしもそんな父におしゃべりな母とおしゃべりな弟と、騒々しい家に育ったので、叔母さんを見習って、絶対静かで情緒が安定した人と結婚しようと決意したのであった


そんな叔母とは誕生日が二日違いで血液型も同じで

父からはしょっちゅう、私は妹と似ていると言われていた


因みに今年の誕生日も言われた


そんな叔母に転機が訪れたのは

約20年前、俳画師である祖父が亡くなりその弟子達を引き継いだときである


私は、叔母が祖父の仕事を引き継ぐと聞いた時、

あのおとなしい叔母が、あのエゴ丸出しのおばあさん集団を率いるなんて絶対無理だと思った

気の毒でならないとしか思えなかった


実際、母にはよく相談していたようで

「もう辞めたら?」と言ったら

突然泣き出したという


それでも叔母は辞めることはなかった

しかし、そのうち

相談事で「なんか、わたしおかしいの」という事を言うようになったという


それからはあっという間で気づくと叫んで物を投げた後、我に返るという


母はそれを聞いて、父に今のうちに会っておかないともう忘れられてしまうかもしれないと説得して連れて行ったが

その時はもう既に父のことも母のことも分からず

主に面倒をみている次男のことしかわからなかったという


その話を聞いて、しばらくしてから

わたしはたまたま叔父のブログを見つけた


内容はただただ、叔母の俳画の作品を紹介しているだけのブログだった

叔母の俳句とそれに添えた絵


それが不定期に紹介されていた


どういう思いでそのブログを始めたか

真意はわからないが、ただ愛は感じた



それからしばらく経って

今年、叔父も壊れてしまったのかと思うような出来事があった

詳しくは言えないが…



話は変わるが

去年までわたしは職場上に出来た

電子治療機の無料体験会に通っていた

お年寄りばかりのところで

そこの店長が

「ボケる方とボケられる方、どっちがいいですか?」と質問した

大抵のお年寄りがボケられる方と答えた


そしたら、その店長が自分の介護体験を切々と話し出した


元々嫌いだったが、更にわたしはその人の事が嫌いになった


ボケた側はその辛さまで自ら語れないのだ


誰かが、ボケていくまでがつらくて完全にボケたら辛くなくなると言っていた

誰がそんなこといったのだろうか

ボケたこともない医者だろうか


じゃあ、徘徊する人は何を思って何を探して徘徊しているのだろう

それを知っているのだろうか


人は誰でも忘れていく

痴呆症になるということを恐れていると思う

小さい頃から

「何かをしようと思って忘れた」

「名前が思い出せない」

そんなことを笑い話にしながら

歳をとるたびに心から笑えなくなっていく


少なくとも私は怖い

そして、わたしもそんな状態になったら

殺してくれと言ってしまうと 思う


もう96歳にもなる義母は衰えはあるらしいが記憶は全く問題ないし病院も自分の足で行っているらしい


うちの両親もわたしの何倍も元気でやる気に満ち溢れている


自分の親が元気でいる

これ以上の贅沢はない


なので、自分も少しでも早く

心配かけない身体と脳でいたいと思い

それを読んでから痴呆症予防の入浴剤なんて購入している



因みに横山秀夫の作品は

まだ5作品ほどしかよんだことがなく

警察裏話ものが多いので

万人に紹介できる作品というとなかなか限られているが、

地方新聞記者時代の時に起きた体験をそのまま活かして書いた「クライマーズ・ハイ」もかなり面白い


「64(ロクヨン)」もとても読み応えがある


直木賞作家に一生なれないとしても

彼は立派な日本人作家の一人である

少なくともタレント面したあの女作家よりは(個人的意見)


他のオススメ作品「クライマーズ・ハイ」